司法書士試験に受かるために必要な勉強時間はどれくらい?
司法書士になるためには、司法書士試験に合格しなければなりません。司法書士試験を合格するためには、どれくらい勉強を行なえばよいのでしょうか?短期合格を目指すために、効率のよい勉強方法があれば知っておきたいですよね。今回は、司法書士試験を受験するまでの具体的な流れと、受かるために必要な勉強時間について解説します。
もくじ
司法書士試験の具体的な流れ
最初に司法書士試験を受験するまでの具体的な流れを見ていきましょう。
司法試験が行われる日程
司法試験は年に1度全国の指定された会場で行われています。試験は一次試験の筆記を合格すると、二次試験の口述試験に進みます。年に1度しか試験はないため、その日に合わせて勉強や体調は万全に整えておきましょう。
法律家として知られる司法書士ですが、取り扱う法律分野が主に「商業登記法」と「不動産登記法」であるため、この2つが試験を突破するカギを握ります。
試験のしくみは筆記試験と口述試験の2本立てとなっており、筆記試験に合格後に口述試験を受けます。弁護士試験よりも挑戦しやすい試験であり、国籍や年齢はもちろんのこと、学歴も必要ありません。どなたであっても司法書士を目指せることも司法書士の魅力です。
受験資格
司法書士試験は年齢、学歴、性別に関係なく誰でも受験できます。受験生がたとえ中学生や高校生であっても試験に挑戦できます。合格するまでは何度でも受験でき、受験回数に制限はありません。
受験料
受験料は8,000円、現金ではなく収入印紙で準備しなければいけないので注意しておきましょう。
受験申請は、4月中旬頃から直接法務局や地方法務局の窓口で入手できます。窓口に出向くことが難しい場合には郵送も可能です。出願期間は例年5月中旬から下旬です。
筆記試験は例年7月の第1日曜日または第2日曜日に実施、午前の部、午後の部にわかれ1日かけて全部で11科目から問題が出題されます。8月には試験問題の解答および基準点の発表、9月下旬~10月上旬にかけて筆記試験の合格発表があります。この筆記試験に合格した方のみ10月中旬の口述試験を受験できます。
最終合格発表は例年10月下旬頃~11月上旬頃に行われます。合格者は受験番号、指名が法務局に掲示されます。また、法務省のホームページでも受験番号で合否を確認できます。
司法書士試験に受かるために必要な勉強時間
法律初学者は3,000時間といわれている
司法書士試験に受かるために必要な勉強時間は合格までに約3,000~8,000時間、期間にすると2~3年勉強時間が必要といわれています。
こちらは法律をこれまで学んだことがない人が試験に合格するために必要な時間といわれています。ただし、少なく見積もった時間となっているので、個人の能力や理解度などに応じて勉強時間を増やす必要があります。
1年間で合格を目指す場合は1日8.2時間の勉強時間を確保する必要があります。2年間で合格を目指す場合は1日4.1時間の勉強時間を確保する必要があります。
この時間を見て気づくことは司法試験に受かるためには果てしない勉強時間が必要なこと、勉強時間は個人的に差があることでしょう。ただし、勉強をこれだけやったからよいというわけではなく、重要なのはその中身です。
合格に必要な勉強時間が長い理由
司法書士の試験は暗記だけで乗り越えられるものではありません。記述問題も出題されるので知識を問うだけではなく、勉強で得た知識を活用できるかどうかも問われています。また、試験科目の範囲も幅広いため、まんべんなく勉強する必要があります。
合格に必要な年数
1回目の試験で合格する人は少ないのが特徴です。合格まで5年以上かかる人も珍しくありません。難易度が高いので、専門学校や予備校を卒業した後に受験する人も多くいます。合格率が5%なので、1問でも間違えてしまうと命取りになります。
いつまでに合格したいのか明確にする
専門学校や予備校に通いながら勉強している人は1~2年、社会人として仕事しながら勉強している人は3~4年で合格する目標を掲げましょう。目標を設定することで、漠然と勉強することを防げます。いつか合格すれば良いと考えるのではなく、決めた期間内に合格するようにしましょう。
受験する回数が3回以上になると極端に合格率が下がる
受験する回数が3回以上になると極端に合格率が下がるというデーターも出ており、勉強時間をどんなに費やしても合格ができない場合には、学習方法そのものが間違っている場合もあります。大手の予備校などでは、およそ2年かけて講座を勉強し合格を目指すのが一般的です。
たとえば、1日7時間勉強を行えば2年間で約5,000時間勉強に費やすことができます。司法書士試験が2~3年で合格できたら、自身の勉強方法は間違っていないといえるでしょう。反対に勉強を5年以上毎日続けていても合格できない場合は、一度学習方法を見直す必要があるでしょう。
司法書士試験の勉強法
法律の改正を見越して受験する年を決定しましょう。また、勉強に必要なテキストや過去問題集は、最新のものを揃えるようにします。
受験する年を決定する
法律の改正が定期的に行われるので、受験する年を決定することはとても重要です。試験内容がこれまでの法律なのか新しい法律なのかによって、勉強する内容が変化するからです。できる限り法律が改正されて、試験内容が変化する前に合格を目指したいものです。不合格になった場合は、これまでの勉強を継続するだけではなく、新しい知識をインプットする必要があるので労力がかかります。
教材を揃える
テキストと過去問題集を揃えるところから始めましょう。テキストは自分のレベルに合ったものを選択するようにします。販売されている数が多くても自分に合っていないものであれば扱いにくいので、勉強が思うように進みません。
また、テキストに記載されている内容が簡単すぎたり難しすぎたりすると勉強する意欲が低下します。そして、勉強するにつれて自分のレベルが向上するので、最初に購入したテキストだけに頼らずに、書店を訪れるなどして新しいテキストを購入しましょう。
インプットとアウトプットを繰り返す
どちらかだけに偏った勉強法では合格するのが難しくなります。テキストを読んでインプットした後は、過去問題集を解いてアウトプットしましょう。それをたくさんこなした人が合格に近づけます。
模擬試験を受験する
大型連休や試験直前の休日などに、専門学校や予備校で模擬試験を受験できます。こちらは独学の人も申し込めるので、実際の試験を受験するつもりで挑戦しましょう。自分の能力を客観的に評価することも可能なので参考になります。
司法書士試験の短期合格を目指すためには?
ここからは司法書士試験で短期合格を目指すためのコツを紹介します。
目標を持つ
司法書士試験を短期合格できる人は目標をしっかり立てていることが多いでしょう。「絶対今年に合格する」という強い気持ちと心構えを持っています。
このようなことをいうと「試験勉強をしているのだから誰もがそう思っている」と思う方もいるでしょう。しかし、実際には強い意思を持って目標に立ち向かっている方は以外と少ないのです。「今年がもしダメだったら来年がある」などと、どこかで逃げ道を探してしまう人もいるでしょう。
短期合格できる人は「今年司法書士試験に落ちたら諦める、次はない」と自分を追い込み、全力で目標をかなえようと努力をします。現実的に合格が難しい場合であっても、「絶対に合格する」という強い気持ちと目標を持つことが大切です。
同じ教材を何度も使い反復練習する
試験勉強を行うときには教材を使用しますが、たくさんの教材に手を出してしまうのはあまりおすすめしません。教材はできるだけ同じものを使用し過去問、基本書、テキスト、問題集などは基本的にひとつにしぼるとよいでしょう。
たくさんの教材を使用するよりも、ひとつの教材を何度も読み返したり、使いこなしたりした方が深い知識を得ることができます。
時間を活用する
勉強時間は隙間時間も利用できます。たとえば、お風呂に入っているときや電車に乗っているときなど、隙間時間を利用していつでも復習できます。入浴前にテキストを見直しお風呂で整理する、電車で携帯を見ながら過去問を解くといったことで机に向かっている時間以外でも学習に活用できます。
独学で司法書士試験を突破するのは可能か
テキストと過去問題集で勉強するだけで合格できる人はごくわずかです。その理由を3つ紹介します。
試験科目の特殊性
専門家以外の人が扱うことがほぼない分野の問題が出題されます。独学で理解するのが難しい場合は、講座を受講するなどして勉強しましょう。
記述式問題の対策が難しい
記述式の問題をどのように解いていくのか独学で理解するのは容易ではありません。手順やノウハウを教えてくれる講師がいるほうが理解しやすいでしょう。
モチベーションを維持するのが難しい
テキストと過去問題集があれば勉強できますが、周りに自分と同じような境遇の人がいることで勉強に身が入ることがあります。また、分からないところがあると専門学校や予備校では講師が教えてくれます。講座を受講している人であれば、メールやチャットなどでフォローしてもらえます。そのようなサポートを受けられないのも、独学では合格するのが難しいといわれている理由です。
司法書士試験合格後に受けるべき「新人研修」とは?
無事に司法書士試験の筆記および口述の試験を突破出来たら、合格を意味します。司法書士試験合格後には「新人研修」という研修が開催されています。
この研修は4つの内容で開催されており、対象者は司法書士試験に合格してから1年以内に司法書士登録を行った方です。司法書士登録とは資格を取得したら「司法書士名簿」に名前を登録することを意味します。新人研修の中身は次のとおりです。
中央新人研修
中央新人研修は近年、eラーニングで実施されています。これは、自宅などから簡単に受講できる研修で、令和4年度の予定を参考にすると、12月から3つのグループに分けて順次開催されます。合計17日間の研修期間で、4万4000円の受講料を支払います。グループ分けの理由はアクセスの集中を避けるためです。
ブロック新人研修
全国8つのブロックに分けて、次に開催されるのが「ブロック研修」です。この研修は基本的に、開業する予定の地を管轄しているブロックで受講します。混雑が予想されるブロックもあるので注意しましょう。ブロック新人研修にも、中央研修と同様に受講費が発生します。受講料は3万3000円です。
司法書士新人研修
司法書士新人研修は別名集合研修や、配属研修とも呼ばれています。各司法書士会によって開催要項は異なっており、集合研修と配属研修のいずれかしか開催されない地域もあります。一般的には各司法書士会に所属をしている実際の司法書士事務所に配属され、実務に触れます。集合研修は実務で必要となるものをトーク形式で学んだり、裁判所に足を運んだりする場合もあります。配属研修は実際の事務所内に入るチャンスでもあります。しかし、就職が内定している方は受けないケースもあります。
特別研修
研修には、認定司法書士を目指すための特別研修もあります。簡易裁判所で訴訟を取り扱いたい場合には、特別研修を受講し、簡裁訴訟代理等能力認定考査に通過しなければなりません。過払い訴訟など取り扱える業務が広がるため、任意研修ではありますが多くの司法書士が受講しています。
司法書士試験合格後に新人研修は必須?
司法書士試験に合格の後に開催されている新人研修は、費用も発生することもあり、正直負担感があります。では、新人研修を受けないと一体どうなるのでしょうか。
結論から言うと、司法書士として働くことができません。司法書士の研修制度に関しては法律によって定められているからです。合格後に司法書士としてすぐに活躍したいと考えている場合には、研修を受講しましょう。
なお、別の資格試験の取得を目指すなどの理由ですぐに司法書士登録を行わない場合には、1年以内に研修を受けなくても問題はありません。新人研修は必須ではありますが、期限内に終わらなければ試験合格が取り消されるものではありません。
司法書士試験合格後のベストな就活スケジュール
難関試験を突破し、夢の司法書士としての第一歩を踏み出す場合には、就職を目指す人も多いでしょう。では、司法書士試験の合格後に終活を実施する場合にはどんなスケジュールで行うものでしょうか。
筆記試験の合格後は就活を開始できる
口述試験は受かっていなくても筆記試験の合格後には、合格見込みとして就職活動を開始できます。口述試験の合格発表が出る10~11月頃は募集が多くなるので、就活のベストタイミングです。特に大手や人気の事務所は応募が殺到しやすく締め切りも早いため、狙っている場合には筆記試験に合格したら、なるべく早く動き始めましょう。
口述試験後も募集は多く、試験へのプレッシャーから解放されてから就活をすることもおすすめです。事務所の規模、働き方などは各司法書士事務所によって大きな開きがあるので、じっくりと色んな事務所を比較し、どこが自分に合っているのか検討してみましょう。
まとめ
今回は、司法書士試験を受験する具体的な流れと、受かるための勉強時間を解説しました。昔に比べると司法試験は合格しやすくなっているとはいえ、短期合格は簡単なものではありません。強い意思と学習方法をしっかりと身に着け合格を目指しましょう。
また、独学で司法書士の試験に合格することは可能ですが、かなり厳しい状況といえるでしょう。専門学校や予備校に通うための費用や講座を受講するための費用はかかりますが、そのぶん効率的に勉強を進められます。また、独学で長年勉強を重ねるよりも、短い受験勉強期間で合格できたほうが実務経験を早く積めます。そのぶん、活躍できる機会に恵まれるのでサポートを受けながら勉強する方法を調べてみてください。
なお、就職については将来的に独立をしたいのか、大手法人で研鑽を重ねるのか、目指すべき方向によって事務所選びの視点も異なります。司法試験を受験したいと考えている方は参考にしてみてください。