司法書士のダブルライセンスは効果がある?相性がよい資格は?
「ダブルライセンス」とは、文字通り資格を2つ持つことです。司法書士といえども独立後は営業活動を行い、仕事を獲得しなればならないのですが、資格をもう一つ獲得することで、業務の幅が広がり仕事を得やすくなり報酬面でもアップします。ここでは、どのような資格がダブルライセンスに向いているかなどを考えていきます。
司法書士のダブルライセンスは有効
司法書士だけでなく、もう一つの資格をもつダブルライセンスは、独立・開業する上で有効です。後でくわしく述べますが、たとえば会社設立など、司法書士の資格だけでは完結しない事務手続きは数多いからです。ダブルライセンスなら、それを完結させることができます。その分報酬も上がりますし、顧客にとっても面倒な手続きを、ワンストップで片づけられるメリットがあるのです。
司法書士のダブルライセンスとして相性がよいのは?
司法書士の現状や取り巻く状況をまとめた「司法書士白書」によると、アンケートに回答した方々の実に8割がダブルライセンスで業務を行っています。そのうち最も多いのが「行政書士」となっており、司法書士のダブルライセンスとして相性がよいことがわかります。ちなみに2番目に多いのは「土地家屋調査士」となっています。
■行政書士の仕事とは
仕事は主に「書類作成業務」「認可申請の代理」「相談業務」の3つです。「書類作成業務」とは、公的な書類を本人にかわって作成すること。具体的には官公庁に提出する、建物業許可や会社設立、帰化申請などの書類を作ります。また会社の決算時に必要となる、財務諸表や会計帳簿など、事実証明に関する書類の作成や、遺言書や遺産分割協議、示談書など、権利義務に関する書類も作成します。
これらの書類を依頼主にかわって、官公庁に提出する「認可申請の代理」も行政書士の仕事ですし、これらの書類を作成するに当たり、会社の経営についてのコンサルティング業務や、相続についての「相談業務」も行政書士の仕事となっています。
■行政書士の難易度は?
受験資格はとくになく合格最低点は6割と聞くと、なんだか簡単そうですが、合格率は10%前後しかありません。かなりの難関資格ということができるでしょう。
■土地家屋調査士とは
不動産登記の中でもとくに「表示に関する登記」を行うのが土地家屋調査士です。家を新築したり、土地を分割したり、農地として登記されている土地を宅地に変更したり。これらのケースが、土地家屋調査士の出番になります。不動産の取引には欠かせない資格です。
■土地家屋調査士の難易度は?
受験資格はとくにありませんが、合格率は毎年10%を下回りますから、行政書士よりも難易度は高目と考えることができます。同じく不動産関連資格の「宅地建物取引士(宅建)」の合格率は15%前後ですから、比較するとかなり難しい資格といえるでしょう。
ダブルライセンスで一番多いのは行政書士
ダブルライセンスで最も多いのは、上でも見たとおり行政書士です。理由としては業務を一貫して請け負えることが挙げられます。それでは会社設立を例に見ていきましょう。
■司法書士と行政書士でできること
商号や本店の所在、目的、決算日を決めたら、会社の設立に必要な書類を準備しなければなりません。ここで必要になるのが行政書士で、とくに「会社の憲法」とも呼ばれる定款(ていかん)の制定に行政書士は欠かせません。
次に法務局へ会社を登記するのですが、ここで司法書士が登場します。つまり司法書士しか持っていない方が、会社設立について相談を受けた場合、書類の準備は行政書士に外注しなければならないのです。ところが、司法書士と行政書士のダブルライセンスなら、会社設立の業務すべてを一貫して請け負うことができるのです。
■ダブルライセンスは受験勉強でも有利
司法書士の試験科目は民法、不動産登記法、商法・会社法、商業登記法の主要4科目に、マイナー科目を加えた11科目です。このうち民法や商法・会社法は行政書士の試験科目と重なります。
また出題形式も法律科目の選択式が大半を占めていますから、両者は似ているのです。行政書士と司法書士のダブルライセンスが多いのもうなずけます。獲得された方に話を聞くと、最初からダブルライセンスを目指していた方はそう多くはありません。司法書士を目指す途中で、力試しで受けた行政書士に合格した方と、司法書士を開業した後に、メリットを考えて行政書士を獲得した方が半々という印象です。
魅力的なダブルライセンスの獲得ですが、結果として両方を獲得したケースを除いて、講座を両方受講するなど、同時に両方を目指すことはあまりおすすめできません。なぜなら、重複する内容も多く、その分の費用を無駄にするからです。すでに書いた通り、司法書士を目指す途中で行政書士に挑戦するか、司法書士を獲得した後にテキストのみを購入し、独学で獲得するのがおすすめです。メリットが多いダブルライセンスのことを頭の隅に置きつつ、まずは司法書士合格に向けて全力を尽くすのがよさそうですね。